青の市場

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霜の降りる音が聞こえる季節になると、今年も市場が開かれた。
神社の階段下通りの市場。青を好む神様を祀っているため、市場では青いものばかり売られている。
普段はひとけがなく神隠しが起こると子供の間で言われたりもするが、今日はにぎやかだ。

蝶に生まれ変わった空の標本、明け方の風を固めた金平糖、オーロラを浴びて咲いた勿忘草の種、ラムネ水が擬態したりんご飴、海蛍を閉じこめたライトスタンド。

露店の間を歩きながら、品々を眺める。

ラピスラズリを食べて育った金魚を買った。
袋の中で水をはねる様子は確かに魚なのに、生き物らしくないところが気にいった。鉱物に見るような、無機物的で鮮明な色。尾を翻すたびに、鱗の上で日の光が複雑に屈折する。

気をつけていたつもりが、つい市場に長居し、見て回りすぎた。雪焼けした時みたいに目がしみてくる。
家に着いて鏡を見ると、はやり色が目に移っていた。
ファンタジー
公開:21/02/11 16:22
市場 神社

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