案内人

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ドアを開けると、そこは雨が降っていた。
暗闇の中で、雨がキラキラと月の光を反射している。だが地面は濡れていない。光の粒が落ちているだけだ。

街路樹の葉や、枝の中にも落ちているので、まるでイルミネーションのように辺りは華やかだ。
「キレイね」そう言って彼女は、一歩ドアの外に出る。 キラキラとしたその粒は、彼女の足下でさらに細かい粒子となって消えて行く。 薄氷の上を歩くように、そっと、ゆっくりと、もう一歩前へ進んだ。 光の粒が彼女の髪に、肩に、降り注ぐ。 楽しげな笑顔が眩しく、とてもキレイだ。

この笑顔を守りたいと思った。
やがて光は雪の結晶へと変化し、さらに乱反射して彼女を輝かせ、光に包んで行く。

僕は気付く。 ああ、きっとこのために僕は使わされたんだ。自分が何者か今分かった。
 
彼女が一歩踏み出すたびに光は増していき、足跡は消えていく。 彼女がこの世にいたことを消し去るように。
その他
公開:21/02/11 01:49

茎田きみゆ( 東京 )

書くのが好きなのでとりあえず思い付くまま書いてます。週に一、二本を目標に書いていきたいですが、休むときもあります。 得意ジャンルはありません。
アイコンを変えました。特に意味はありません(^_^ゞ
2021.4.5
ペンネームを『小山田みゆき』から変えました。

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