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十二時きっかり。シャリシャリというハイハットの音が隣室から聴こえてきた。
俺は布団から這い出して襖を開ける。
「いい加減にしなさいよ」
昔の眼鏡を掛けた黒服の俺が顔を上げる。
「誰あんた?」
「夜中にうるせえんだよ」
黒服の俺は構わずドラムのセッティングを続けている。
俺はそっと襖を閉め、冷蔵庫からビールを取り出して元の場所に戻り、柱で背中を擦りながら床に腰を据えた。
黒服の俺は立ち上がると、今度はギターのチューニングを始める。
俺は諦めて彼を眺めている。ビールの栓を抜く。
準備が整い彼が弦を強く鳴らすと、アンプから大音量が響き渡った。近所迷惑だと言いたいところだが、音は俺にしか聴こえない。
黒服の俺は下手なCGみたいに雑に分身して三人になる。
馬鹿みたいに楽しそうにして、全力でロックを歌う。
「うるせえなあ」
言いながら俺は、奴の音楽に合わせてまた、捨て切れなかった歌を口ずさんでいる。
青春
公開:21/02/10 23:55
更新:21/02/10 23:43

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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