葉脈指紋

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旅行先から郊外の家に帰ってくるとドアの鍵が開いている。なかに入ると何か変だ。乱れはないが侵入された気配。冷蔵庫を開けると空っぽだ。リビングの水槽の金魚がいない。警察に電話すると警官がやってきた。「何かなくなったものは?」と彼は聞く。「冷蔵庫の食料全部と、金魚がいません」「それだけ?」「それだけです」警官は目ざとく床の小さな跡を見つけて「足跡ですね。鑑識に来てもらいます」
鑑識課員がやってきた。あちこち調べてから「足跡は大きな昆虫のような生物。推測ですが多節足の生物です。指紋を採取しました。不思議なことに指紋がどれも葉脈のパターンです」
結論は出ないまま警官と鑑識課員は帰っていった。
日が暮れた。リビングのソファに座り一人で思った。葉脈の指紋を持つ多節足の生命体。彼または彼らはなぜこの家にやってきたのか。ピーピピッとパルス音がした。そのうち聞こえなくなった。空耳だったかもしれないと思った。
その他
公開:21/02/09 11:31

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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