ジャケットの中身

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彼女の梓からもらったダウンジャケットは軽くて暖かったが、最近、縫い目から白いふわふわが妙にたくさん出てくる。
パンパンパン。
ふわふわふわ~
ジャケットを叩くと、白いのがさらに出てきてゆったりと宙を舞った。ふわふわの1つを手にとって見ると、下に種らしきものがついていた。
-綿毛?
梓は僕の言うことにはおかまいなしに、てくてくと歩き続けている。前を行く梓が空を見上げたので、僕も視線の先を追う。と、鳥の群れがこちらに向かってぐんぐん近づいてきた。
バサバサ、スー、ワサワサワサワサワサ~
急降下した鳥たちが、羽ばたくといい香りがして花びらが舞った。

梓がこちらを振り向いて微笑んでいる。花鳥たちは僕のジャケットに集まって、羽ばたき続ける。
ポッ、ポッ、ポッ
ジャケットの縫い目から、花びらが飛びだした。と思うと、パタパタ~。花鳥となって青空へと飛び去っていった。

僕のジャケットはぺしゃんこ。
公開:21/02/09 00:41

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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