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テーブルに置かれたカップの、ことん、という固く小さな音が部屋の静けさを際立たせる。
「どうするんですぅ?」
女はボリューム感のあるセミロングの髪をくるくると指に絡めている。
「もうちょっと」
そうは言うもののすでに小一時間が経つ。暖房の加減も手伝ってか、男はハンカチを持ち、しきりに額の汗を拭っている。

目の前には二つのプラン。
①転生し、全く別の世界で生きていく。転生後の待遇は金額次第。
②記憶を保ったまま、人生をやり直す。どの時点まで戻れるかは金額次第。
①②とも、借金・盗みによる支払は不可。

見積もりでは、異世界では中級魔法使い。やり直せるのは高校三年時点からだった。悪くない。

男はぐい、とレモン・ティーを飲み干した。
「決めた」
女は見向きもしない。
「この部屋に入る前の時点に戻ります」

去っていく男の背を見ながら女が何か呟く。

足元から猫が抜け出し、男の後を追って行った。
ファンタジー
公開:21/02/08 23:00
更新:21/02/08 22:33

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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