花

「鬼たるもの、人間を支配する為、領地からは出てはならん！」
なんて、親父からは言われていたが旅もしてみると案外悪くない。
そりゃ、鬼だから人間に見つかったら騒動になるさ。でもさ、これが面白いんだ。
この前、人間の男女が俺に「私達を食べて下さい！」って頼み込んできたんだ。理由を聞いたら女がいけ好かない地主に嫁入りさせられると言う。だから二人で心中しようと決めたそうだ。
俺はニヤリと笑った。妖怪の知り合いを集めて、女の花嫁行列を行ったんだ。
するとどうだ。地主の奴、腰を抜かして嫁入りを破棄してきた。
またある時は小人の侍が姫と結婚したいがきっかけがないと俺に相談してきた。
俺は懐から打出の小槌を取り出し、それを使ってドラマチックな演出を考えた。
あの侍、無事姫と祝言を上げられたようだ。
当てもなく自由気ままな旅。道中の人助けも悪くないな。

風の噂で青鬼の活躍を耳にする度、赤鬼は嬉し涙を流す。