ない話じゃない話じゃない?

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「あり得ねえ」電話口で、盛山が嘆息をもらした。「カノジョと別れたよ」

「そうか」ない話じゃないと思うけど、と俺は心の内だけで訂正した。目を擦り、休まず動く時計を見れば、やはり深夜一時を回っていた。「早くも原因を突き止められた気がする」今度のは声に出ていたかもしれない。

 が、盛山の男泣きは幸いにもデカく、彼に俺の小言は聞こえていなかった。
「あり得ねえよ」盛山は何やら納得していないようだ。「アイツ、オレのことはまだ好きだけど別れたい、とか言ったんだ。理由は聞いても答えてくれねえし。頭がおかしいぜ」

「それは」たしかに、おかしい気もした。「でも、おまえ、別れることを了解した」

「了解もなにも、オレがフってやったんだ」

「え?」驚いた。「そうか。変なことを言うカノジョに愛想を尽かしたというわけか」

「そんなわけないだろ。まだ、好きだ」

 二人共に好きだが別れた。「あり得ねえな」
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公開:21/02/09 18:24

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