Re:Re: 往復書簡 水素カフェさん作『名前も知らない花』

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「絵、ですか?」
客は嬉しそうに頷いた。
変わった人だと女は心の中で首を傾げた。だが客は更に言葉を続けた。
「一緒に花を買いに行ってもらえませんか?」
「…は?」
もはや接客用の顔を装うのも忘れて、女はぽかんと口を開けた。
「この前は何にも考えずに買っちゃって後悔したんです。僕センスないから、この花瓶に合う花を見立ててもらいたくて」
…いやいや、それは営業外だし。
そう思ったはずが、客の意味不明な熱量に引きずられたのだろうか。結局ろくに話したこともない男性と連れ立って、駅前の花屋に行く羽目になった。
「え…」
「あら…」
だがようやく辿りついた花屋のシャッターは、無情にもしっかりと閉まっているではないか。
「定休日、ですって」
女の声も耳に入らない様子で客は叫んだ。
「明日、もう一度付き合って下さい!」
女は内心ため息をついた。
仕方ない。明日もし売ってたらサラセニアの花でも勧めてみるか。
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公開:21/02/09 16:20
更新:21/02/09 18:02
水素カフェさん お付き合いを ありがとうございました 画像はサラセニアの花 食虫植物 多分あまり売ってない… 花言葉「変わり者、変人」 #108

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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