ゼロ

バーガープリンスのレジには長蛇の列ができていた。
店頭の看板には新メニューの宣伝が大仰に貼り付けてある。

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ゼロバーガー！　ノンカロリー！！
体内に吸収されない油、エコミート、アボカド風半固体ペーストを使った、すべての人に優しい次世代バーガーです！！
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健康志向もここまで来ると何が何やらわからないが、我々は欲望を抑圧するのではなく、素直に消費する道を選んだのだ。

人工仮想食品によって食欲を満たし、各種栄養補完ピルによって健康を維持する。

美味いモノを好きなだけ食べ、不味くて滋養になるモノはカプセルに詰めて胃の中に押し込む。合理的だ。

肥満による死者数は年々減少し、食料問題も改善して餓死者の数値も下がり始めた。

「ゼロバーガーと、ゼロソーダ。それから薬膳ピルを」

人類が新たな栄華に酔いしれている頃、密かに奇妙な病が流行り出していた。
『排泄制御不能症』
欲望が暴走を始める。