小さな手足

魚が産まれた。検診では確かに人の形をしていたソレは、出てきてみると魚の姿をしていた。
「まじか」
とりあえず水槽に入れてもらった。医者も困っていたが、ひとまずソレは一命を取り留めた。
病室で旦那に見てもらう。二度見しつつも何も聞いてこない。二人でしばらくソレを見つめていたら、どちらともなく吹き出した。
「かわいいね」
「うん」
ようやく我が子として受け入れられそうだ。我が子はクルクル回って、明るい狭い世界を喜んでいた。
我が子は段々と外に出たがるようになり、足が生えて腕が生え、ついに肺呼吸を始めた。でも苦しそうで、心が痛かった。
「外の世界がいいなら、頑張りなさい」
手を差し伸ばすと、握り返す。ついに最初の一歩を我が子は踏んだ。
普通の形とは違ったけれど、私の子は他の子と同じく、新しい世界を生きていく。
成人したあの子が今、どんな進化をして生きているのか。便りを楽しみに私も生きている。