皮膜電位理髪店

「今日は皮膜電位でやりましょう」と理髪店の店主が言う。椅子に座ると布をかけられる。「頭皮の皮膜電位を測って理想的にカットできます」言いながら頭に何かを付ける。「端子を頭皮に付けます」端子からは細いケーブルが伸びている。鏡を見ると頭部の前に三本、中ほどに三本と後ろに四本のケーブル。「もう一つ舌先に付けます。舌を出してください」口を開けると店主は手際よく舌の先端に端子を貼り付けた。「しばらくじっとしてください」店主は大きなヘルメットを頭にかぶせた。内部には円板状の刃がちらりと見えた。「では」とスイッチを入れるとヘルメットの内側でバサバサと髪が刈り取られる。切った毛髪が飛び散る。
動きが止まった。店主は舌の端子を外し、十本のケーブルを引き抜いた。
ヘルメットを取り上げると鏡にはスキンヘッドの頭。
「少々、設定が違っていたようで。。」店主は言い訳した。
鏡のなかのスキンヘッドは笑い泣きをはじめた。