蝶々結び

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 蝶々結びの右の輪を良心の天使が、左の輪を規律の天使が引っ張っている。
 欲望の悪魔は下に伸びる紐を引っ張り、この輪を消そうとする。
 悪魔が規律の天使にささやく。
「おい、赤信号なんて無視しろよ、遅刻しちまうぞ? 遅刻は規律違反だろ?」
規律の天使の手が緩む。すかさず悪魔が紐を引くと、蝶々結びが崩れる。
「ダメよ! 信号は止まらなきゃ」
良心の天使の声にハッと気を取り直した規律の天使は、輪を引っ張っり元に戻す。
 その時、隣のお姉さんが前からやって来た。
「いい所に! このあと暇? 友達にドタキャンされちゃって」
規律の天使は叫ぶ
「断るのよ。塾があるんだから!」
良心の天使も踏ん張る。
「サボるなんてダメよ!」
だが欲望の悪魔はものすごい力で紐を引いた。
 あっという間に蝶々結びがほどけて、俺の本能は解放された。
「暇です!」
恨めしそうな天使を見て、悪魔はニヤッと笑った。
その他
公開:21/02/05 11:06

仁科佐和子( 愛知県 )

児童文学、エッセイ、小説などを書き散らかし、公募にいそしんでおります。

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