孤独の円環

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諦観。捕食されるシマウマが最後の時を無抵抗で過ごすのに似ている。

悪夢だ。
ここも実在した場所なのだろうか? この梁から垂れ下がっている麻縄は、本当に誰かの最後を看取ったのだろうか。

一体どれだけの間、彷徨い続けているのかわからない。過ごした時間を推し量るものがここには存在しない。窓の外は漆黒の闇だ。

入り口は、入り口へ。
裏口はまた別の裏口へと繋がっている。

ドアを開くと、新たな飲食店が姿を現す。その繰り返しだ。しばらくの間、私はある店の同じ席に居座り続けたが、結局また歩き出した。

同じ絶望でも、人は変化のある方を好む生き物らしい。

そして、いまやってきた場所には、見覚えがあった。もう思い出すことも無くなっていた、学生時代に通った店。

「ここも潰れたのか」

キッチンテーブルに手をつく。
何が、経済再生担当だ。

私はうずくまり、気づくと嗚咽していた。
出口のない闇の中で。
その他
公開:21/02/04 23:30
更新:21/02/04 23:15

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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