自滅するアバター

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ここはバーチャルワールド。
アバターたちが正義のために戦う。

この世界で僕は、スポーツ万能な青年の姿になることもできるし、ロボコップみたいな体格のいいキャラクターになることもできる。あるいは羽根の生えた天使や、赤いドレスのセクシーな女性になることもできる。黒い猫でもいい。

さて、スケートボードに乗って軽やかに敵を倒す15歳の僕は、めくるめく冒険をした。バーチャル同士だがティンカーベルに恋もした。

でも、アバターとしてこの世界でかっこよく活躍すればするほど、現実世界の自分がみすぼらしく思えて、そこに戻るのが辛くなった。結局僕は、自分を執拗に追う影から逃げられなかったのだ。

僕はついにアバターをズタズタに破壊した。ドリアン・グレイの肖像のように。15歳の美しい顔は消えた。

そこに倒れているのは醜く歪んで縮んだ75歳の肉体。

その体を抱きしめて涙を流す僕の妻。
その背には透明な羽根。
SF
公開:21/02/06 17:46
更新:21/02/07 02:19

クロッカス( 西のほう )

読書と創作文で脳内トリップ中。

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