最後の日の空

ついに地球が終わるらしい。
ナントカという動画配信者により一か月前に告げられた言葉は、始めは小学生くらいしか相手にしなかったが、観測史上最大の隕石接近というニュースにより今や世界中の人々の関心を集めている。専門家によると、タイムリミットは今日の正午頃らしい。
僕はいつもの制服に着替え、学校へ向かった。校門は開いていたが、人の気配はない。通いなれた美術室のドアを開けると、意外にも先客がいた。
「あれ、来たんだ？」
「うん、まだ作品が途中だったから」
そうだよね、と頷く彼女はキャンバスに背を向けてこちらに振り返った。
「私さ、一か月前に例の予言動画見たんだよね。で、地球最後の日の空ってどうな感じだろって思って、この絵を描いたの」
思わず窓に目を向けると、広がるのは曇天。彼女と顔を見合わせ、同時に吹き出す。
「うまくいかないもんだねえ」
そう笑う彼女の背後には、透き通るような青空が広がっていた。