写実画家

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友人に一風変わった画家がいる。アトリエを訪ねると、テーブルのワインの瓶を描いている。見るとキャンバスの下半分を赤く塗ってある。「抽象画?」「ワインを描いている」「これが?」「瓶は重要ではない。重要なのはワインだ」
しばらくしてまたアトリエを訪ねた。今度はヌード。ソファに横になったモデルさんを前に描きかけのキャンバスを覗く。臓器が、胃とか腸、肺、心臓が描いてある。「これは?」「重要なのは彼女の肉体ではなく中身、ボディの中なのだ」
数か月後。アトリエで鏡に向かってキャンバスを立てている。「自画像?」回り込んでキャンバスを見ると、そこには文字ばかり。文字、言葉、いろんな単語を脈絡なく描いている。「自分の顔を見て描いた。重要なのは頭部ではない。そこで考えていることなのだ」
半年後、画家は浜辺にキャンバスを立てて海を見ていた。近づくとキャンバスは真っ白。
「水平線をみても何も見えて来ないんだ・・」
その他
公開:21/02/03 10:25

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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