笑い

　授業中。教師が熱弁を振るい始めた。
「いいか、君たちより数十年長生きしている俺が、君たちに人生の秘訣を教えてやろう。それは、笑うことだ。面白いときには自然に笑えるだろう。だが、辛いとき、苦しいとき、怒りで理性が保てなくなりそうなとき、そういうときにこそ笑うんだ。笑うことで心の余裕が生まれる。心の余裕は、正しい行動へと自らを導いてくれる。実際に俺も、笑うことでこの荒々しい教師という職業を――」
　生徒たちが突然笑い出した。
　本気の笑いではなく、明らかに無理やり作り出した無機質で皮肉的な笑いだ。
「おい、授業中だぞお前ら、黙れ！」
　教師は大声を出して必死に場をなだめようとしたが、嘲笑はますます大きくなるばかり。
　やがて、教師も笑い出した。笑い出すしかなかった。
　授業が終わるまで、その地獄は延々と続くのであった。