指先から繋がる

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「そんなに暇なら手伝ってと言いました」
目の前の女性は膝のトートバックを抱き締めるようにして項垂れた。
「真面目で凝り性で完璧主義なところがあって、納得するまでとことんやらないと気が済まない人でした。仕事が無くなってすっかり塞ぎこんでしまって毎日虚しいだなんて言うから、じゃあ芋の皮剥きでも手伝ってよと。一つ目はそれは酷い出来で。皮はぶつ切れ、剥けた実の方が多くて食べる場所なんて無いくらい。でも面白かったのか悔しかったのか、それから毎日芋を剥くようになりました。みるみる上達して十日も経つ頃には千切れることもなく剥ききれるようになって」
ショリショリと聞こえるこの音は何だろう。
「皮を剥ききって薄く実も削って、もう無い、何も無いんです」
くたりと開いた鞄の口から、渦を巻くように積もった皮と赤く変色した芋と、肉色の何かが高さを増していくのが見える。
「先生……主人は一体何を剥いているんですか」
SF
公開:21/02/04 01:40

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