ユキばぁのカカシ

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縁側で蜜柑を食べながらユキばぁの作るカカシを見ていた。
竹で編んだボディに古着を着せると驚くほど本物っぽい。
最初はよくある竹に布を巻きつけて帽子を被せたカカシを作っていたのに、器用な上に元々凝り性のせいか、一年余りでこんなにリアルなものを作るようになってしまった。
「どうもこの顔気に入らんねぇ」
ユキばぁはカカシの頭を右から左から眺めては、納得いかない様子で首を傾げた。

『原の爺さんが庭に居るから、施設から帰って来たんかと思ったらユキばぁのカカシじゃった』
最近では似た話をあちこちで聞く。ユキばぁの作るカカシを見間違えることが増えたのだ。
集落のあちこちに置かれたカカシ。みんな最初は寂れた村の賑やかしだと喜んでいたけど、この頃では……。

原のお爺さんはカカシが置かれて間もなく亡くなった。
私はユキばぁの手にしたカカシの頭を見ながら祈った。
どうか、どうか誰にも似ていませんように、と。
ホラー
公開:21/02/03 21:05

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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