二人三脚

4
3

妻に誘われ、冬の山へとトレッキングに訪れた。
薄く積もった雪に足を取られないよう慎重に歩く俺。妻は軽い足取りで先へ先へと進んでいく。
「あっ!見て!もう蕾がついているよ!」
妻が指さす方を見れば、雪の笠を突き破って花の芽が頭を出している。
「リス発見!可愛い~」
妻が教えてくれなければ俺では見つける事が出来なかっただろう。
「きゃっ!」
はしゃぎ過ぎた妻が足を滑らせた。軽く捻っているな…俺は妻をおんぶした。
「ごめんね…」
「構わんよ。その代わり、何か見つけたらまた教えてくれ」
妻は嬉しそうに頷き、何か見つける度に楽しそうに教えてくれた。

あれから50年…
俺は足腰の弱った妻を背負い、山を登っている。
苦労なんて思うものか。俺は見つけるのが下手だ。だから妻が俺の目となってあれこれ教えてくれて嬉しい。
妻が楽しんでくれるなら俺は喜んで妻の足となろう。
今日も俺達の二人三脚は息がぴったりだ。
公開:21/02/03 20:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容