町の境目

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都内で困るのは、境目が曖昧なことだ。
地元なら町外れの目印があり、市境は山の中だ。
ここでは町の端がわからない。歩いているといつの間にか別の町や妙な所に入り込んでいる。

先日友人の家に行く途中、脇に石畳の細い坂道があった。ところどころ色ガラスが埋め込まれている。
町が菫色に陰る中、ガラスは空に残る光をわずかに反射していた。

ガラスを追ううちに結構上り、振り返ると、
道が闇に沈んでいた。
戻るのは抵抗があり、さらに上る。坂は平衡感覚が狂うような歪んだ階段になり、不規則に折れ曲がって先が見通せない。両側の塀が傾いてくる気がした。
携帯が鳴った。
友人だ。居場所を伝えると、人に会っても見えないふりをしろと言われた。教えられるまま道を進む。誰にも会わず、広い道路にでると携帯を耳にあてた友人が見えた。

変なとこ入るなよ、と友人。
祠や縄があれば気づくのにと言うと、見たらわかるだろと返された。
ファンタジー
公開:21/02/01 22:45
路地 階段 境目

字数を削るから、あえて残した情報から豊かに広がる世界がある気がします。
小さな話を読んでいると、日常に埋もれている何かを、ひとつ取り上げて見てる気分になります。

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