破滅のダイヤ

4
5

よくある話だ。
カーペットに染み込んだ鮮血と、目を見開いたまま倒れた男、半ば開いた手の中には小箱。その横に、大振りのダイヤ。

ダイヤは持ち主を失う度、ひび割れ、外周が砕けて小さくなる。
人の手を渡り、数多の人生の転機を見てきた。物語を知る人々は口々に言う。破滅のダイヤ、と。

人間はなぜ、自らに不相応な価値を手に入れようとするのだろう。偉大な星の力で生み出された奇跡の石に、なぜ自身がつり合うなどと考えるのだろう。

答えを得ることは叶うまい。
やがて誰の目にもつかないまでに小さくなり、透明な砂になる。人々はまた、新しい呪いを手に入れるだろう。

誰かが、私を運んでいる。狭い場所に閉じ込められしばらくすると、とんでもない力が加わった。久闊なる超高圧。老いた瞳が、上から覗いている。
私はアンビルという実験道具にされているらしい。
子供のような純粋な瞳。
私はずっとここに居たい、と思った。
ミステリー・推理
公開:21/02/01 21:00
更新:21/02/01 19:37

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容