暗がりの奥

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 我が家の脱衣所は内側の壁にスイッチがある。パチンとつければ二畳半の小さな脱衣所に明かりがつく。
それだけのことなのに、私は恐怖に震えている。
 電気をつけてしまえば何と言うことはない、ただの脱衣所なのだ。ただ…スイッチを押すときが問題だ。
「ひっ!」
私は伸ばした左手を反射的に引っ込めた。
暗い脱衣所の中に手を伸ばし手探りでスイッチを探すとき…触れるのだ!誰かの指が!
 どれだけ探しても、脱衣所には誰もいない。だが暗闇でスイッチを探る時、向こうからもスイッチを押そうとしているかのような指に行き当たるのだ!
 怖い。手を伸ばすのが怖い。
私は棒を用意した。
手に触れないよう棒でスイッチを押して電気をつける作戦だ。
 スイッチの場所にあたりをつけ、暗闇に棒を突っ込む。
「ギャッ」と声がして電気がついた。
 
明かりのついた脱衣所の鏡の中で、目から血を流した女が恨めしそうにこちらを見ていた。
ホラー
公開:21/02/01 09:07

仁科佐和子( 愛知県 )

児童文学、エッセイ、小説などを書き散らかし、公募にいそしんでおります。

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