深爪朝顔

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 朝、爪を切ったら深爪をしてしまった。
 あっ、やってしまった。
 そう思った時にはすでに遅く、私の深爪をした場所から大輪の花が咲いた。深爪をしたのは中指だったので、咲いた花は朝顔だった。
 花に触れると、指を軽く触れられた時のようなくすぐったさを感じる。
 それはよくない兆候なのだ。指の神経が朝顔の花にまで張り巡らされているということなのだから。
 花は通常三日くらいで枯れてしまうのだが、その間は注意深く行動をしなければならない。
 もしも、不注意で朝顔の花が壁に触れてクシャリと潰れてしまえば、私は自分の指が潰れてしまったかのような痛みを覚えることだろう。勿論、パソコンで書類を作る作業なんてご法度だ。
 幸い、今は会社での仕事がそれほど忙しくはない。
 私が三日ほど休暇を取っても、特に何の差しさわりもないはず。
 だから、私はすぐにスマポで上司に連絡をし、連休を取ることにしたのだった。
ファンタジー
公開:21/02/02 21:31
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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