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囲炉裏の火を消すと、一気に寒くなった。
やや複雑な面持ちの福猫に見守られながら素振りを続けて体を温めていたが、午後七時を過ぎても、彼は来ない。

私は少し不安になる。たしかに、今回は少し特別だ。嫌な予感ばかりが胸の中にむくむくと膨らんでいく。息が苦しい。

いや、これは策略だ。
私が油断するのを、息を殺してじっと待っているのだ。
彼はやって来る。そして私が追い返す。
無意味に思える闘争も、千年続けば意味などいらなくなる。

しかし彼はやって来ない。福猫は退屈を極めて眠りに落ちた。耐えかねた私は再び囲炉裏の火をつける。何してるのよ。

時計を見る。針は間もなく十二時を指そうとしている。こんな風に、終わりを迎えるのか。諦めが部屋を満たした時、壁が吹き飛び、鬼が姿を表した。

「日ぃ変わってたのかヨ!!」
百二十四年ぶりの、二月二日。

「待ちくたびれたぞ、阿呆め」
笑みが溢れないよう舌を噛む。
ファンタジー
公開:21/02/02 21:00
更新:21/02/02 20:14

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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