病は君から

付き合ったばかりの彼女はいつもなんだか体調が悪そうだ。
よく口元に手を当てて深刻な顔をしているし、僕が近づけば慌てて俯いてしまう。
他の人の前ではそうではないから僕が原因なのは明らかなのだが、心当たりがない。

デート中に気になって、一度、具合が悪いなら切り上げようかと提案したことがあった。
すると彼女がものすごい勢いで提案を却下してきて、その姿に圧倒された僕はそれ以来、二度と口に出さないようにしている。
あまりに心配なので問いつめたこともあったが、お陰様で心身共にすこぶる健康ですと真顔で返答され、さらに困惑した。


そんな彼女と今日もデートだ。
冷え込むとニュースで聞いてタンスから1年ぶりに引っ張り出してきたマフラーとコートの完全防寒で彼女を待つ。

「お待たせ……衣替えしんどい無理」

時間ぴったりに来た彼女が、僕を見るなり心臓を押さえ膝から崩れ落ちた。
今日も彼女は元気そうだ。