吊り手

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ぷつんと張り詰めていた糸が切れた。糸は幾重にもなって私を取り囲む。海に入っていくような耳が籠る感じがする。息苦しい。意識が遠のいた。

目が覚めると妻がお粥を作っていた。
「海を見たんだ」
「最近行ってないね」
微笑む妻の背後、吊り手から彼女へと糸が垂れる。これは怪談ではない。
ホラー
公開:21/01/31 09:40
更新:21/01/31 09:44

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