冷たい空気の中の穏やかな温もり

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仲良しの友達とのいつもの帰り道
穏やかな坂道を越えた先で
目を細めるほどに染まったオレンジ色
思わず漏れた感嘆の声が
ヒューっと流れる風に溶けて行く
ひんやりした空気が通り過ぎるのを
なびく黒髪を抑えてやり過ごす
ピッ
ゴトン
帰路の少し先からの音に目を向けると
自然と意識する人のシルエット
暁を背に立つその姿は
はっきりせずとも見間違えるはずがなく
その人影から離れる小さな影が
ゆっくり弧を描いて向かってくる
「間違えたからもらってよ。」
すーっとてのひらに収まったのは
暖かな温もりで
ピッ
ゴトン
二度目の音にハッとすると
その人は橙色と青紫色との間に溶けていた
カチッ
カチッ
…カシュッ
くぴり
ほんのり苦くて
そして甘い
暖かなものが手から口に
そして身体の中から全身に
「お礼…明日でいいかな。」
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公開:21/01/31 05:44

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

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