金魚の吐き先

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金魚の吐き先を求めて、川のほとりを歩いていた。

心が傷つくと、なぜか金魚が込み上げてくる体質になった。最初はトイレに吐いていたけど、次第にちゃんとした場所に吐いてあげたくなった。だって金魚は可愛かったから。

小さな滝が見えてきた。滝の前にうっすらと虹が見える。

今日はすごく怒られた。上司のミスがわたしのせいになっていた。誰もわたしの味方をしてくれなかった。

虹の下に金魚を吐いてあげたいと思った。あそこなら金魚も寂しくない気がする。世界にはいろいろな色の金魚がいる。虹みたい魚だと思う。

わたしは靴を脱いで、ズボンをまくり、川の中に入っていった。自然の水の冷たさを肌で感じる。虹が見えていたあたりで、口を開けて吐いた。金色の金魚だった。

金魚はぐるぐるとまわって、ぴょんと跳ねた。わたしの心の傷は今日も可愛かった。上司と戦う元気がわいた。
ファンタジー
公開:21/01/31 00:04
更新:21/01/31 00:05

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