陽だまり

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窓際にフタを外したペットボトルが並んでた。
「陽だまりを汲んでるんです」
洗って乾かしてるだけだろ。思ったけど黙ってた。こいつの中では整合性が取れてて、うっかり触ると根こそぎ倒れて落ちるんだ。軽くて透明できらきらした、夢だけ食って生きてる奴。
「溜めてどうすんの?」
神経質に揃ったボトルみたいな、栗色のまつ毛がぱちぱちした。
「お茶に入れると、丁度良い加減になるので」
多分俺にはぬるいな。無駄に想像して頭で笑う。ベストに程遠い温度と距離を、わざわざ広げてる意気地なし。
「洗濯物もふわふわになります」
「うちは陽当たり悪いんだよ」
慎重に端っこのを一本。頼りなさげな光は冷えた指に案外熱くて、飲み口から懐かしい匂いがした。
「進呈します。使いきったら、また取りに来て下さい」
「出歩くと寒いからヤダ」
欲しいのはそういうのじゃないんだよ。案の定すぐ同化する熱に冷めて、毒づきながら次に指を伸ばす。
青春
公開:21/01/30 21:16

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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