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「今日は随分と降っているね」「そうですね 早く戻りましょうか」「焦ることはないよ ほら」
あなたが手元からろくろを前方へと押し出すと 紙が空間をひらいた
油引きされた胴紙の上を 前方から後方から右から左からとあちらこちらで ぽんぽろぽんぽろと声が撥ね除けられ 竹先で滴になる
それは踏み固められた土の色を変えると じわりと溶けた
肩をならべるその傘の中では 声は聞こえない
「この番傘は特別なものでね つがいがさ と言うんだよ ほら これで僕ら 夫婦水入らずだ」
肩をならべるその傘の中では 声が聞こえる
朱の番傘の手元を持ったあなたの囁きが 私の耳を染めてゆくのを感じた
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公開:21/02/01 01:44
更新:21/03/01 01:16

真月。

ご覧いただき ありがとうございます。
よろしかったら読んでみてください。
作品の絵も自身で描いております。

コメントや☆など とてもありがたく思っております。ありがとうございます。
のほんとしたお話や癒しとなっていただけるようなお話を描けたらと思っております。

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