ヴォルグの酒

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 ヴォルグという街には、酒に関わる次のような伝承がある。
 かつて、ヴォルグという街は酒の神ドーカスに愛された地と言われていた。この街にはカルムという川が流れているのだが、そこから実に質の良い酒が流れていたからだ。
 この酒の川は、ヴォルグの西側に聳えるカナストール山から流れていたのだが、その源を辿っても、ただの水が流れているのを確認することしかできなかった。
 水源ではただの水であったものが、ヴォルグの街に入った瞬間、実に質の良い酒に変じる。これこそが、酒の神ドーカスにこの街が愛されている証拠とされていたのだ。
 ところが、ある時この酒の川を奪おうと、隣街の者達がヴォルグの街を襲った。するとそれ以来、カルム川から酒が流れることはなくなってしまったのだという。
 このため、ヴォルグの酒は今ではもう、伝承の中でしかその存在を確認できないのだ。
ファンタジー
公開:21/01/31 21:51
アルタージュ国伝承録

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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