留守番の条件

ママが家を出る前、分厚い絵本を渡してきた。
「いい子でお留守番しているのよ」
私は頷くとすぐに本を開く。大きなお城が飛び出した。
私はそれを色々な角度で覗き見る。
王様とお姫様はどこだろう？この人達は何をしているのかな？
気になり始めると居ても立っても居られない。私は飛び出す絵本の中に飛び込んだ。
ここに来るのは初めてではない。兵士のおじさん達とは顔見知りだし、食堂のおばちゃんはおやつをくれる。
『一人でお留守番なんて偉いわね』『いつでもここにきていいんだぞ』
絵本の中の人達は皆優しくて、私はここが大好きだ。
ふと空を見上げると、見知らぬ大人が絵本を覗き見ていた。
「泥棒だ！」
私の声に兵士のおじさんが『任せておけ！』と言って絵本から飛び出し、あっという間に泥棒を退治した。
『君のママから家と君の護衛を頼まれているからね』
飛び込む事も飛び出す事も出来る絵本と留守番。好条件にも程がある。