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部屋を見るなり彼は叫んだ。
「こんなとこに住んでるのか!」
「余計なお世話だよ」
わが四畳半の孤城を訪れたジョナサンはうわ、うわ、ひええ、ひええ、と先から同じ感嘆詞を二度ずつ言わないと死ぬ病にでも罹ったようにしつこく奇声を発し続けている。
「こんな狭い部屋、子供の頃飼ってたウチのハムスターだって逃げ出すよ。これが日本人の精神性というやつかな。わさび、だっけ? ああ、違った。WABI・SABIだったな」
僕は座布団を指差し、そこに座ってくれと無言で頼んだ。彼は言いたいことを吐き出したからか、満足そうな顔で腰を下ろした。
「そんな複雑な理由じゃないよ。土地が狭いんだ。どこかの野蛮な民族みたいに、原住民を追い出してまで自分たちの生活圏を押し広げようとはしてこなかったからね。飲むかい、君の国の伝統的な飲み物だけど」
冷蔵庫からコーラを取り出して見せると、彼は不満そうに目を細めて僕を睨んでいた。
その他
公開:21/01/31 22:00
更新:21/01/31 22:19

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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