摩擦の無い世界

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この間、古道具屋で買った異国の小さなランプ。
机の上に置いていたが、ふと思いついて、手でこすってみた。
すると何と!空中にターバン姿の魔法の精が現れた!

彼はなぜか浮かぬ顔でこう言った。
「何か御用でしょうか。最近疲れ気味でして、御用が無いなら帰らせて頂きたいですが」
私は呆れたが、何だか気の毒になり「帰っていいよ」と答えた。
魔法の精は喜んで「有難うございます。ではお礼に一つだけ、望みを叶えて差し上げます」と言う。

そこで「うん、近頃、私の周囲に摩擦やあつれきが多くてね。摩擦の無かった頃の状態に戻しておくれ」と言ってみた。
魔法の精はうなずき「お安い御用です。それではサヨウナラ」と消えた。

私は不思議な気持ちで、やりかけていた仕事のノートを開いた。
すると、何と!摩擦をして消したはずの「フリクション」のペンの文章が、全て復活しており、
何が何やら分らないページになってしまっていた。
ファンタジー
公開:21/01/31 17:31
ランプ 摩擦しなければ よかった

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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