苦労請負人

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「その苦労、私がお引き受けいたしましょう。」
私はこうして大なり小なりの苦労を請け負ってまいりました。何故かって?皆さまの笑顔を見られることこそ私の全て。それが、当然で普通であるから。ですので、お気になさらず…。
「その苦労、半分お持ちしますよ。」私の横から、ひょいと顔をのぞかせ言ったのは知らぬ男であった。「私にとっては普通のこと。お気になさらず。」「普通な訳ないですよ。この世界の苦労を全てあなた独りが引き受けるんですか?これまでもこれからも?」「えぇ。」「そうしたら、僕の活躍の場も減っちゃうじゃあないですか!」おちゃらけたような口調だが、笑顔が眩しかった。「どれを受け止め、どれを委ねるのか、見極めないとね。それと、分け合うことも。」そうして私は初めて、苦労を半ば強引に分けることとなった。
「これは大変だ!」苦労を背負うと男は、また笑顔を向ける。
『変な男だ。』
私は自分の涙の味を知った。
その他
公開:21/01/29 20:40

真月。

ご覧いただき ありがとうございます。
よろしかったら読んでみてください。
作品の絵も自身で描いております。

コメントや☆など とてもありがたく思っております。ありがとうございます。
のほんとしたお話や癒しとなっていただけるようなお話を描けたらと思っております。

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