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「誰にでもチップインバーディみたいな夜はあるよ」
彼はそう言うと、裸のままガラス戸をノックしてからベランダに出ていった。
聞きたいことは3つある。
ここで言うチップインバーディとは私を抱いたことなのか。なぜベランダに出るのにノックが必要なのか。なぜ裸に靴下だけというその姿を恥ずかしく思わないのか。
私はふとんの中からベランダの彼にメールで質問を投げかけた。
ほどなく彼の返信はきた。
グリーンを捉えたボールがそのままコロコロとカップに吸い込まれていく。日々練習を繰り返してそうなることを願っているけれど、本当にカップインすることなんてまれだから驚いてしまう。そういうこと。
よくわからない。次。
ベランダにはベランダの神様がいるから挨拶は必須。
次。
靴下を履いてないと俺がどこにいるか見えないでしょ。目印。
ふうん。
ベランダには靴下だけが風に揺れていて、スマホが非常階段を下りてゆくのが見えた。
公開:21/01/29 18:06

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