毛紙(けがみ)

10
7

髪の毛には魔力が宿る。願い事を書いた紙と自分の髪を封筒に入れ、毛無山神社に奉納すると願いが叶うという。毛紙と呼称される封筒を持参して来る参拝者に宮田宮司は頭を悩ませていた。
「どうします? SNSで物凄い勢いで拡散されてますよ。デマだとホームページには掲載しましたがどこまで効果があるか」
禰宜(ねぎ)の日野原が真っ青な顔でパソコンのモニターを指差す。直接持ち込む参拝者には、事情を説明し持ち帰って貰うのだが、郵送して来る人が後を絶たない。住所が無記名の封筒もあり、対処できずに貯まっていくのが現状であった。
「警察に相談しましたが、収まりますかね」
「先ずは今の状況を何とかしないと」
ダンボールの中で一つになった大きな欲望の渦がこちらをじっと見ている気がしてぞくりと寒気がした。
「うわっ」
日野原がつまみ上げた分厚い封筒を思わず手放すと、落ちた床で毛虫の様に蠢いた。
ホラー
公開:21/01/29 16:51
更新:21/01/29 16:56
毛紙 毛虫 もうしわけぇございません ©️島田一の介さま(吉本新喜劇)

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容