机舐めの男

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 除菌アルコール、塩素系消毒液を噴霧しながら、僕は自問自答する。
 表面をティッシュで拭き清めて、業務用のラップを敷き詰めたら、そのラップも再び入念に消毒する。
 キリンが水を飲む時のように体を屈める。キリンのように長い舌があればなと思う。唇をラップにつけないように、そしてなるべく舌の広範囲を触れさせられるように、体全体を使って慎重に舐め進める。ゴミ袋を貼り合わせて作った防護服が擦れるときのシャリシャリという音の他は何も聞こえない。ラップの上に唾液が溜まっていく。それは決して床上に垂らしてはならない。
 大丈夫。飽きるほど繰り返している行為なのだ。
 中学には958の机があった。高校には2428。図書館には158の机。
 近年は消毒に気を使っているので、僕が舐めた後のほうが、机についている菌は減っているはずだ。問題ない。
 だが、なぜ舐める?
 僕は、いつだって、その答えを探しているのだ。
その他
公開:21/01/29 14:22
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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