アレンジ

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パッキンが名残惜しそうに粘着音をさせて離れてゆく。夜明け前のこの時間まで目が冴えてしまって、何と無しに冷蔵庫を開けた。
一番上と二段目には、『分量を間違えてしょっぱくなった恋愛』『賞味期限間近の目標』『小瓶に入った手つかずの暮らしがいくつか』
三段目は丸々一段、『ほっとする結婚』に空けてある。
引き出しには、『しおれかけた仕事』『やや芽の出た趣味』『硝子の保存容器にちょこんとした貯金』があった。
何だか、いっそう眠れなくなりそうになった。

無駄にしてはと、恋愛に暮らしを加えてみるとしっくりくる味になった。そうしてどれも活かせやしないかと模索した。棚にあった『過去』と『未来』で共に積み重ねたそれを、頬張った。
手際もよくない、器用でもない、けれど。
レストランのように洗練されてもいない、定食屋のように懐も深くない、僕の感性と経験でつくられたそれは、確かに僕の味となっていた。
その他
公開:21/01/30 13:45
更新:21/02/08 16:04

真月。

ご覧いただき ありがとうございます。
よろしかったら読んでみてください。
作品の絵も自身で描いております。

コメントや☆など とてもありがたく思っております。ありがとうございます。
のほんとしたお話や癒しとなっていただけるようなお話を描けたらと思っております。

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