満員温冷でございます。

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わたし、本当にあなたのことすきだった。
雨に濡れながら、寂しげに紫陽花を抱えていたあなたを見て、私が温めてあげたいと思ったの。
だからわたし、できる限りのことをした。
料理も覚えて、マッサージを学んで、猫を飼い始めた。
部屋の中はあなたがいつも持ってくる花たちが映えるように、シンプルにまとめた。
あなたの長く、細い髪を綺麗にまとめられるよう結い方を勉強したわ。
あなたが浴衣を着たいと言うから、着付けをおばあちゃんに習った。

全部全部あなたのため。
あなたの心を温めるため。


それなのに、あなたは私じゃない男に、安っぽいホテルで身を委ねた。


だから、その彼と共にあなたを冷やしてあげることにしたの。











大きな冷凍庫、気に入ってくれるかしら。
ミステリー・推理
公開:21/01/29 22:31

こひま( 新潟県 )

文章を書くこと、絵を描くこと、写真を撮ることが趣味です。
浮かんだものを、浮かんだように書きます。
様々な色を持つ作品を綴れたら、と思っています。
 

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