こい

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こいがしんでいた。

大切に育ててきたこいがしんでいた。
からり、と干からびてしんでいた。
あんなに餌をやったのに。
水も、生きる場所も見つけたのにしんでいた。

夏の夕暮れ、今日は花火大会。
町から聞こえる笛の音。
空には赤と橙のペンキをぶちまけた色と私のなみだを宝石にする光。

こいがしんでしまった。
あんなにすきだったのに、しんでしまったの。

打ち上げるはずの花火が湿気てしまったみたいに、やるせない気持ち。
どうして、という声は風に吹かれてどこかへ運ばれた。








彼には届かない。
私じゃない、お団子が似合う誰かを連れていた彼には。

こいがしんだのは彼のせい。
隣を歩いていた誰かちゃんは、大きなりんご飴がよく似合う女の子だった。

あんなに思い出も、気持ちも、あげたのに。
恋がしんでしまったわ。
恋愛
公開:21/01/29 21:31

こひま( 新潟県 )

文章を書くこと、絵を描くこと、写真を撮ることが趣味です。
浮かんだものを、浮かんだように書きます。
様々な色を持つ作品を綴れたら、と思っています。
 

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