巫女花の謂れ

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 神の善意が人の一生を狂わすことがある。花の女神ジョシアと花巫女ルディナの物語は正にそれだ。
 ある時、花の女神ジョシアがフリストル平原を散歩していると、一人の花巫女が花を摘み、祈りを捧げているのに出くわした。
 この花巫女はルディナという名前で、抜けるように白い肌をした巫女であった。
 女神ジョシアはその敬虔な巫女の様子にいたく感心し、祝福の意味を込めてルディナに息を吹きかけた。
 すると、かの花巫女の身体は見る見るうちに、無数の雪のように白い花となり、フリストル平原に咲き乱れたのであった。
 女神ジョシアはこれを見ると、実に良いことをしたといたく満足して、そのまま立ち去ってしまった。
 それ以降、このフリストル平原にはルディナの身体が変化した白い花ばかりが咲き乱れるようになったという。
 この花のことを、人々が巫女花と呼ぶのには、このような謂れがあるのだ。
ファンタジー
公開:21/01/28 08:06
アルタージュ国伝承録

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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