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その朝、オフィスはざわついていた。
新人女子社員の席の辺りに、五、六人が集まっている。
「あ、課長、おはようございます」
「うん」
机の横の衝立には黒々としたなにやら毛むくじゃらの物体が引っかかっていた。毛むくじゃら、と言うより毛そのもの。毛そのものというより、それは私の鬘である。
昨夜、新人の歓迎会があった。
いまは表情を強張らせている彼女もその場にいた一人である。
二次会を追えた後、私はやり残した仕事のあったことを思い出して人気のないオフィスへと戻った。
小一時間ほどで作業を終えた私は伸びをしながら部屋を巡り、偶然見つけた卓上鏡を見ながら鬘を取って頭を拭いた。少し気持ちが良かったのでそのまま廊下に出て自販機でジュースを買ったが、入室カードキーを置き忘れてきたことに気がついた。
「何かのメッセージでしょうか」
近くのサイドボードに掛けただけだ、他意はない。
「変態ですね」
やめろ。
新人女子社員の席の辺りに、五、六人が集まっている。
「あ、課長、おはようございます」
「うん」
机の横の衝立には黒々としたなにやら毛むくじゃらの物体が引っかかっていた。毛むくじゃら、と言うより毛そのもの。毛そのものというより、それは私の鬘である。
昨夜、新人の歓迎会があった。
いまは表情を強張らせている彼女もその場にいた一人である。
二次会を追えた後、私はやり残した仕事のあったことを思い出して人気のないオフィスへと戻った。
小一時間ほどで作業を終えた私は伸びをしながら部屋を巡り、偶然見つけた卓上鏡を見ながら鬘を取って頭を拭いた。少し気持ちが良かったのでそのまま廊下に出て自販機でジュースを買ったが、入室カードキーを置き忘れてきたことに気がついた。
「何かのメッセージでしょうか」
近くのサイドボードに掛けただけだ、他意はない。
「変態ですね」
やめろ。
ホラー
公開:21/01/27 22:00
更新:21/01/27 21:24
更新:21/01/27 21:24
さまようアラフォー主夫
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