仮面の夢

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 こんな夢を見た。
 ほの暗い明かりが灯された館の中には、様々な仮面が飾られている。
 仮面劇的なものではなく、デスマスクに近い。生きた人の顔にそっくりなのだ。
「いかがです、素敵な仮面でしょう?」
 この館の主人だという娘さんは、そう言って笑った。
「皆さん、人生に疲れて仮面になりたいということで、この館に来るんです。誓約書を取って、責任のありかをしっかりと確認してから、仮面にさせてもらっています」
 娘さんは明るく話をする。
「でも、仮面にしている顔以外の部分はどうしてるんですか?」
 私が尋ねた途端、横にいた瑠夏がアッと叫んだ。
 見れば、それぞれの仮面の奥から干からびた茶色い身体や手足らしきものが、ニョロッと現れだしたのだ。
「ウフフ、別に皆さん、死んでるわけじゃありませよ。ちゃんと生きてるんです」
 娘さんがそう言うと、それに合わせるかのように、仮面たちが一斉に呻き始めた。
ファンタジー
公開:21/01/27 20:16
更新:21/01/28 21:52
夢中探検隊

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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