はり治療

無理に重い荷物を持とうとして腰を痛めた。
訪問診療の広告が目に入り、早速電話すると約一時間後に男が来た。
男は部屋に入るなり柱の鳩時計を解体し、寝ている俺の横に座った。
「いや、そのままうつ伏せで。すぐ施術します」
そう言うと男は、物凄い速さで俺の腰に針の様な物をプスプスと刺し続けた。
「ふう、終わりました。秒針を五千回程刺したので、貴方の腰は五千秒前の状態、つまり腰を痛める前の状態に戻りました。これが私の時計の"針”治療。重い物を持つ時はくれぐれもご注意を。では料金ですが……」

あれ、財布の中身が減ってる…何に使ったっけなあ……あ、荷物を置きっぱなしだ。よし、思いきって！

そろそろ電話がくるかな。別れ際に部品を返す際、隙を見て頭に時針を一回と分針を数十回刺した。
つまり、彼の頭の中はその時点で荷物を持つ前の…。