無意識列車

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車窓は真っ暗だ。車両には僕一人だけ。車掌が歩いてきた。
「すみません。どこを走っているのですか」
「この無意識列車ですか?」
「無意識のなかを走っているのですか」
「無意識は列車のことです」
「誰の無意識?」
「もちろんお客さまのです」
「いつから乗っているのだろう」
「お客さまの意識次第です」
「ところで外が暗いですが夜ですか。」
「無意識列車は物質空間を走りません」
「物質空間?」
「意識界ではそう呼びます。無意識は非物質を走ります」
「ときどき窓に灯りが見えますが、あれは?」
「意識の灯りです。意識界で無意識を気にかけると光ります」
「他に乗客は?」
「列車はお客さま専用です」
「いつまで走りますか」
「意識界が眠ると停止します」
「夢は無意識のうちに見るんですよね」
「そういう誤解があるようです」
列車が減速して停止した。照明が暗くなった。車内も真っ暗だ。闇。車掌はどこかに行った。
その他
公開:21/01/26 10:16

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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