社長の評価

「転職先は失敗だった」
友人は肩を落としてつぶやいた。
「社長がいい人だったんじゃなかったっけ」
相談に呼び出された私は分からなかった。
「そうさ。知り合いに尋ね回ったら社長の評価はすこぶる良かった」
その話は私も以前聞いていた。
「確か、私にはあのやり方は真似できない。私もそうなりたい。って言われてたんだよな」
友人は力なく顔を上げた。
「あぁ。そこに致命的な盲点があった。私は大馬鹿者だ」
「どういうことだ」
しばらく沈黙した後、友人は口を開いた。
「尋ね聞いた評価というのは同業の社長仲間からの評価だったんだ…」
どういうことだ。
「同業社長から評価される社長…」
仮に私が同業の社長だとして羨むなら…
情に流されない冷血な判断。
徹底したコスト管理。
社員は捨駒と割り切った経営。
ふふ。俺にはそんなブラックな社長は無理だ。
…はたと我に返った。

「そりゃ最悪な社長じゃないか」