霜の音楽

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 早朝の稀比都市はヒンヤリとした空気に包まれている。
 外はまだ暗く、懐中電灯がなければ足元もよく見えなかった。でも、私は冬の稀比都市を早朝に散歩するのが好きだ。
 散歩をするようになったのは中学校に入ってから。色々なことがイヤになって、早朝の風にでも当たれば少しは頭が冷やせるかと思って外に出たのがはじまりだった。
 それ以来、私はこの冬の散歩の虜になってしまった。
 今も、私は歩きながら足が霜を踏むたびに奏でられる音楽に耳を傾ける。
 それは比喩でもなんでもなく、紛れもなくオーケストラが奏でるような音楽だった。
 昨日は「火の鳥」を霜たちは奏でていた。けれど、今日の霜たちは「時の踊り」を奏でている。
 いつも朝になるとできる霜たちは、それぞれ音楽に対する違った嗜好を持つらしい。
 そのお陰で、私は毎年、飽きることなく冬になると早朝の散歩を敢行できるのだから、自然に感謝すべきなのだろう。
ファンタジー
公開:21/01/27 08:25
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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